2013年8月9日金曜日

James Zuccollo 「9・11テロの副次的な効果」(2013年8月9日)

James Zuccollo, “Side effects of 9/11”(TVHE, August 9, 2013)


人間というのは、限定合理的な(boundedly rational)存在だ。何らかの意思決定を下す時に、その都度最適な選択肢を探すよりも、ヒューリスティック(heuristics)に頼ろうとするのだ。しかしながら、ヒューリスティックがその人のためになるとは限らない
2001年のテロ事件が発生して以降の数カ月間に、アメリカの主要な航空会社の旅客マイル(旅客数×飛行距離)は12%~20%減少した一方で、車での移動が大幅に増えたという。
・・・(中略)・・・
ドイツでリスクについて専門的に研究しているゲルト・ギーゲレンツァー(Gerd Gigerenzer)教授の推計結果によると、9・11テロ以降の1年間に、車での移動が増えたせいで1595人のアメリカ人が自動車事故で命を失うことになったという。9・11テロという悲劇の間接的な犠牲者と言えよう。 
・・・(中略)・・・ 
リスクに対する貧弱な理解が原因で失われた命だとギーゲレンツァー教授は語る。「フライパンから火の中へと飛び込んだわけです」。 
ギーゲレンツァー教授は続ける。「私たちは、一度に大勢が命を失う状況を恐れるような傾向を備えています。私たちの祖先が小さな集団でまとまって生活していた時代の名残だと思われます。一部のメンバーの死がそれ以外のみんなの命も危険に晒してしまいかねない時代のですね。今ではそうじゃなくなっているわけですが、死者の数は同じであっても、それが一度で失われるか1年間の累計で失われるかで感じる恐れが違ってくるのです」。

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