本日のウォール・ストリート・ジャーナルが次のように伝えている。
FOMCの議事要旨によると、先月Fedが政策金利を引き上げた理由の一部は、マーケットが政策金利の引き上げを予想していたからであるようだ。Fedの政策当局者たちは、(マーケットが政策金利の引き上げを予想しているにもかかわらず;訳者挿入)もしも政策金利を引き上げなければ、Fedのインフレファイターとしての信頼性が損なわれる恐れがある、と考えていたようである。Fedのこのような反応を軟弱(wimpy)だと捉える向きもあるだろう。Fedがリーダーシップをとってマーケットを先導しているというのではなく、Fedはマーケットの欲するように行動しているというわけだから。しかし、他方で、Fedのこの反応を金融政策の分権化に向けたステップと見なすことも可能である。
ここで仮に、Fedは長期的なインフレ目標を採用しており、以下のルールに従って政策金利を決定するものと想定することにしよう。
政策金利の決定にあたって、まずはマーケットが予測するこの先数年にわたる政策金利とインフレ率を確認する。マーケットが予測するこの先数年にわたるインフレ率がFedに課せられたインフレ率の目標値を上回っている場合には、マーケットが予測する(この先数年にわたる政策金利の将来経路)よりも高めに政策金利を設定する。反対に、マーケットが予測するこの先数年にわたるインフレ率が(Fedに課せられたインフレ率の)目標値を下回っている場合には、マーケットが予測する(この先数年にわたる政策金利の将来経路)よりも低めに政策金利を設定する。マーケットが予測するこの先数年にわたるインフレ率が(Fedに課せられたインフレ率の)目標値と一致する場合には、マーケットが予測する(政策金利の)経路をなぞるように政策金利を設定する。ここで循環が生じているように見えるかもしれない。Fedはマーケットに反応している一方で、マーケットはFedに反応している、と。しかし、何も問題はない。経済学者は同時決定(simultaneity)の問題には慣れっこなのである。
もちろん、マーケットはFedの反応を織り込もうとするだろうが、何も構うことはない。実のところ、そうなることが理想である。最終的には、Fedがインフレ目標を達成することをマーケットが予測するような(訳注;マーケットによるインフレ率の予測がFedの目標値と一致するような)不動点(fixed-point)に至ることになるだろう。そのような均衡状態においては、Fedがインフレ目標を達成する上でどのように行動する必要があるかはマーケットが予測する政策金利の将来経路によって伝えられることになるだろう(訳注;インフレ目標を達成するためにはマーケットが予測する(政策金利の)経路をなぞるように政策金利を設定すればよい)。