2013年10月14日月曜日

David Henderson 「カーリー効果 ~都市は落ちぶれど、支持は高まる?~」(2012年5月4日)

David Henderson, “Curley Effect in California”(EconLog, May 4, 2012)

 

ボストン市長を4期務めたジェームズ・マイケル・カーリー(James Michael Curley)は、貧しいアイルランド系の住民を利するために無駄の多い再分配政策に着手する一方で、扇情的なレトリックを弄して(アングロサクソン系の)裕福な住民がボストン市から出ていくように仕向けた。その結果として、ボストン市の有権者の構成がカーリーにとって有利になる方向に変わったのである。ボストン市は停滞したが、カーリーは市長選で勝ち続けたのだ。

エドワード・グレイザー(Edward L. Glaeser)&アンドレイ・シュレイファー(Andrei Shleifer)の共著論文――“The Curley Effect”(pdf)――からの引用だ。

引用を続けるとしよう。

このような戦略――「富を減少させる歪んだ政策を通じて、自らの政治的な支持基盤を拡大させる戦略――を「カーリー効果」と名付けるとしよう。とはいっても、カーリーだけの専売特許というわけではない。同じような例――政治的な敵の退出を促す政策を推し進めて、選挙区を荒廃させると同時に自らの政治的な立場を強化しようと試みた例――は、他にも見出せるのだ。アメリカの他の市長だけではなく、世界中の政治家の間でも。例えば、24年間にわたってデトロイト市長を務めたコールマン・ヤング(Coleman Young)は、白人(および、白人が経営する企業)がデトロイトから出ていくように仕向けた。「ヤングが市長を務めている間に、デトロイトは、黒人が多数派のシティ(city)の一つに変貌したというにとどまらない。デトロイトは、黒人のメトロポリス、合衆国の中にある第三世界のシティ(Third World city in the United States)のはしりともなったのである。そのことを象徴する証拠は、至る所にある。ショーケース・プロジェクト、黒い拳のモニュメント、仮想外敵、熱狂的な個人崇拝」(Chafets 1990, p. 177)。 独立を果たした後のジンバブエでは、同国の大統領を務めたロバート・ムガベ(Robert Mugabe)が白人の農民たちに対して強権を発動した。ジンバブエ経済に甚大なダメージが加わるのも構わずに、白人の農民たちが国を離れる(他国に移住する)ように公然と強いたのである。 

カリフォルニアでも似たような事態が進行しているのではなかろうか。カリフォルニアは、民主党によって牛耳られている州の一つ――州議会では民主党が多数派を占めていて、州知事は民主党出身――で、大いに無駄なプロジェクトが進められている最中だ。高速(ハイスピード)鉄道計画がそれだが、「ハイ」スピードは実現できそうにない一方で、「ハイ」コストになりそうなのは間違いない。所得税の最高限界税率が引き上げられるのも――カリフォルニア州の最高税率は、全米で一番高いにもかかわらず――間違いなさそうだ。そうなったら、生産性の高い住民の多くが別の州に移住するだろうし、もう既に移住しているにもかかわらず、民主党陣営はそのことを心配していないようだ。高速鉄道計画には、彼らなりのイデオロギーが関わっているという意見もあるかもしれない。そういった面も確かにあるだろう。しかしながら、民主党陣営の目的の一つは、民主党に反対する可能性のある有権者の数を減らして(別の州への自主的な退出を促して)、州内において民主党支持者が多数派を占めるように図ることにあると思われるのだ。

民主党の支持者の多くは損害を被るだろうか? もちろんだ。民主党を支持する有権者の境遇と、民主党の政治家の境遇を区別しなくてはいけないのだ。高速(ハイスピード)鉄道計画が実施されても、州議会の議員には高給が払われるし、議員としての特権も相変わらず享受できるのだ。選挙で敗れたり選挙区の区割りが変更されたせいであぶれたりしても、州政府で高給の閑職に就けるのだ。