本日付(2006年7月21日付)のウォール・ストリート・ジャーナル紙で次のように報じられている。
FOMCの議事要旨によると、Fedが6月(先月)に政策金利を引き上げたのは、マーケットが政策金利の引き上げを予想していたからというのも理由の一つのようだ。マーケットの予想に反して政策金利を引き上げなければ、インフレファイターとしての評判に傷がつくと恐れたようなのだ。
ビビりだなあと思う人もいるかもしれない。リーダーシップをとってマーケットを引っ張るわけではなく、マーケットの御機嫌を取っているというわけだから。しかしながら、考えようによっては「金融政策の分権化」に向けて一歩踏み出すことができるかもしれない。
どういうことかというと、Fedが例えば2%のインフレ目標を採用すると同時に、以下のようなルールに従うようにすればいいのだ。
マーケットが政策金利とインフレ率の今後についてどのように予想しているかをチェックする。将来的にインフレ率が2%を上回るというのがマーケットの予想のようなら、マーケットが予想しているよりも高めに政策金利を設定する。それとは反対に、将来的にインフレ率が2%を下回るというのがマーケットの予想のようなら、マーケットが予想しているよりも低めに政策金利を設定する。インフレ率が今後も2%にとどまるというのがマーケットの予想のようなら、マーケットが予想している通りの高さに政策金利を設定する。
循環しているように見えるかもしれない。Fedはマーケットに反応し、マーケットはFedに反応するというわけだから。しかしながら、どこにも問題はない。経済学者は、同時性(simultaneity)の問題に慣れっこなのだ。
言うまでもなく、マーケットはFedの反応を織り込んで予想を立てるだろう。しかしながら、何の問題もない。そうなることが理想なのだ。最終的には、インフレ率が今後も2%にとどまるとマーケットが予想するような不動点(fixed-point)に達するだろう。あとは、マーケットが予想している通りの高さに政策金利を設定すればいい。そうすればインフレ目標を達成できるのだ。